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女医 大森真帆のコラム
膀胱炎の症状:
血尿や痛み、かゆみなどを伴う場合に疑われる病気一覧(監修記事)
2019/02/20
同じ膀胱炎であっても全く症状がない場合から、様々な症状が出る場合まであります。どんな症状があったら膀胱炎を疑うのか、その症状ではほかにどんな病気が考えられるのかを見てみましょう。
膀胱炎の初期症状
膀胱炎では以下のような症状が出ることがあります。
- おしっこをするときの嫌な感じ(排尿時違和感)
- 排尿後すっきりしない(残尿感)
- 排尿時の痛み(排尿時痛)
- 排尿時の熱感
- おしっこの回数が増える(頻尿)
- 尿の混濁
- 血尿
- 下腹部痛
- 発熱
- 吐き気
症状を悪化させる原因
膀胱炎を悪化させる原因の1つが、トイレを我慢することです。最も多い原因である細菌感染の場合、尿意があるのにトイレに行くのを我慢すると、膀胱の中に細菌のいる時間が長くなり、膀胱炎自体が悪化し、症状の悪化にもつながります。
そのほかにストレスや寝不足で免疫力が低下していると、一度膀胱に入った細菌をなかなか追い出すことができず、症状が悪化します。免疫抑制剤を服用している人や免疫力が低下しやすくなる糖尿病や慢性腎不全、がんなどの病気にかかっている人も膀胱炎が治りにくく、症状が悪化しやすいです。
膀胱炎になると症状は様々ですが、中には突然強い症状を感じる人もいます。
血尿
膀胱炎では膀胱の壁に炎症を起こしており、皮膚でいう擦り傷のようにじんわりと出血することがあります。
血尿には尿の色を見て変化がわかる「肉眼的血尿」と、見た目は正常でも検査をすると血液が混じっている「顕微鏡的血尿」があります。肉眼的血尿であっても赤色とは限らず、オレンジ色であったり黒っぽいコーラ色になることもあります。
膀胱はもともと血流の多い臓器であり、膀胱の中には尿という水分があるので出血が止まりにくく、血尿が長く続くこともあります。血尿が続く場合は出血性膀胱炎とも呼ばれます。出血性膀胱炎の原因としては細菌感染だけでなくウイルス感染や服用している薬が原因であることもあります。
女性は血尿を生理と間違えることがあるので、注意が必要です。
膀胱炎以外に血尿で考えられる病気
- 急性腎炎:
腎臓の血液をろ過する糸球体に炎症が起きる疾患で子どもに多くみられます。 - 尿路結石:
尿路に結石ができる病気です。腎臓や膀胱、尿管などにできます。結石で尿の通りが悪くなり、尿路の壁を傷つけることで出血し血尿となります。 - 尿路系腫瘍(腎臓がん・尿管がん・膀胱がん・前立腺がん):
がんの部位は血流が多く、もろいため容易に出血します。その血液が尿に混じって血尿になります。
排尿痛
膀胱炎では膀胱の内側の壁が炎症を起こしています。排尿時には膀胱が収縮して炎症部位が刺激されて排尿痛があらわれます。
排尿のどのタイミングで痛みがあるのかも、診断のポイントになります。尿の出初めに痛みが出やすいのは尿道炎や前立腺炎、尿の終わりに痛みが出やすいのは膀胱炎・腎盂腎炎・尿管結石、排尿の間ずっと痛むのは尿道狭窄が多いとされています。
膀胱炎以外に排尿痛で考えられる病気
- 尿道炎:
男性に多く、性感染症である淋菌やクラミジア感染が原因になることもあります。 - 前立腺炎:
排尿初期に痛みが出やすいことが多いです。 - 尿管結石:
石が尿の通り道を傷つけて痛みがでます。排尿の終わりがけに痛みがでることが多いです。 - 腎盂腎炎:
腎臓に細菌が入って炎症を起こした状態です。多くは膀胱炎が悪化して細菌が膀胱からさらに奥である腎臓に入り込んで発症します。 - 尿道狭窄:
繰り返す尿道炎などで尿道が狭くなった状態です。ひどくなると尿閉といって全く尿が出なくなることもあります。
かゆみ
膀胱炎では陰部のかゆみを伴うことがあります。この場合のかゆみは膀胱炎そのものが原因ではありません。膀胱炎の多くは細菌が感染し、免疫力が低下した状態です。そのため、膀胱に入り込んだ細菌と同じものが膣や陰部にも感染して、膣炎や外陰炎を併発していることがあります。
膀胱炎以外で考えられる病気
病気でなくても下着や生理用品による蒸れで雑菌が繁殖し、肌への刺激になり、かゆみの原因となることがあります。陰部は皮膚が薄く、保湿力が低いので乾燥もしやすく、かゆみの出やすい部位です。
- 細菌性膣炎、膣カンジダ、トリコモナス膣炎:
おりものに変化が現れます。 - 性器ヘルペス:
性器の周囲に水疱と痛みを伴います。 - 接触性皮膚炎:
皮膚に赤いブツブツや水疱などの発疹がみられます。 - 尖圭コンジローマ:
いぼができます。 - 疥癬:
ダニによる感染で、外陰部に小さな赤い隆起が多発します。
発熱
膀胱炎では熱が出ることはほとんどありません。しかし、膀胱炎による他の症状があり発熱が見られた場合には細菌が別の部位に感染した可能性があります。
膀胱炎以外に発熱で考えられる病気
- 腎盂腎炎:
細菌が膀胱からさらに奥にある腎臓に入り込んで感染した状態です。 - 前立腺炎(男性のみ):
尿道から前立腺のほうに細菌が入り込んで感染した状態です。 - 精巣上体炎(男性のみ):
副睾丸炎ともよばれます。陰嚢に腫れや痛みが現れます。重症になると手術が必要になったり、不妊の原因になることもあります。 - 菌血症:
血液の中に菌が入り込んだ状態です。全身に細菌が運ばれて、様々な感染症のもとになります。
膀胱炎症状に加え発熱を認める場合は、なるべく早く医療機関を受診しましょう。
腹痛や腰痛
膀胱炎では下腹部の痛みがでることがあります。下腹部は膀胱のある位置です。
腰痛は膀胱炎の細菌がさらに腎臓に向かって進み、腎盂腎炎になると現れます。
膀胱炎以外に腹痛や腰痛で考えられる病気
下腹部痛で考える病気
- 便秘症:
便は肛門に近づくほど固くなるので、下腹部で症状が出やすくなります。 - 結腸憩室炎:
大腸の壁にへこみができた状態を憩室といいます。この部分に炎症を起こすと腹痛と時には血便がみられます。 - 虫垂炎:
盲腸に炎症を起こした状態です。心窩部から右下腹部の痛みを認めることが多いです。 - 腸炎:
胃腸風邪や食あたりなどで腸炎を起こすと、炎症と腸の動きが激しくなって腹痛をおこします。 - 子宮筋腫:
子宮筋腫があると生理に伴って痛みがでることがあります。 - 子宮付属器炎:
子宮や卵管、卵巣などに細菌などが感染して炎症を起こした状態です。 - 婦人科系のがん:
子宮がんや卵巣がんでも腹痛を起こすことがあります。
腰痛で考える病気
- 腎盂腎炎:
膀胱から腎臓に細菌が入り込んだ状態です。腎臓は背中側に近いので、腰痛と訴える人もいます。感染を起こしている側の腰部を叩くと痛みが増強する場合が多いです(叩打痛)。 - 尿管結石:
尿管は腎臓に近い頭側の方では背中側に近いため、腰痛として症状が現れます。 - 腎臓がん:
腎臓のがんです。 - 椎間板ヘルニアなど腰椎が原因の病気:
腰椎が原因の腰痛は整形外科で診断してもらいます。
まとめ
症状のない膀胱炎もありますが、膀胱炎を疑う症状が現れたら、免疫力を落とさないように生活を見直して、水分をしっかりとり、尿意を我慢しないなど、膀胱炎が悪化しないように対処する必要があります。膀胱炎であっても病院にかかるのが基本ですが、特に血尿や腹痛は他の病気との区別も重要です。自己判断して我慢せず、早めに病院で検査を受けましょう。
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